私のアルバイトデビューは京都のCDショップでした。
私は、音楽が大好きなので、最初のアルバイトは音楽関係の仕事がしたいと思い、念願の職にありつくことが出来ました。
最初は、CDを売るだけで、レジが打てれば勤まると思っていたので、簡単に仕事というものを捉えていました。
それに、好きなCDを割引で買える・・しめしめなどと考えてましたが、
・・人生甘いものではありません。
毎日入荷する在庫の整理から、店内の掃除、POPの作成、棚卸し、万引き対策までありとあらゆる業務の波が押し寄せてきました。
その上、時給500円
そりゃ~私みたいな者でも雇ってくれるわけです・・
そんなある日、私に人生を変える転機が訪れたのでした。
店長が、音楽ショップだから売れるだろうと、ウォークマンを約100台ほど仕入れてきました。
しかし、レコード屋で家電品を売るのは難しく、誰も買ってくれない。
そこで、私に白羽の矢が射抜かれました。
店長 「柳澤!1日1台ずつ売れ!」
絶対無理や〜と思ったのですが、店長の命令は絶対!
売れなければ首になると察した私は辞める覚悟をし始めました・・
私は、赤面性の上、人前で話すことすら抵抗があったので、正直どうやって売ったらいいのかまったくわからなかったのです。今の自分を知っている方はウソや〜って言われそうですが、当時は本当にそうだったのです。
店長 「まぁ、がんばりや。もし1台売れたら時給100円上げてやるよ。」(ぜったい無理やろうけど←心の声)
その言葉を聞いて、私の魂に火がついた!
「やってやろうじゃないか!」
家電屋の店員さんばりに、「はい、いらしゃいませ~!ウォークマンいりませんか~!!」の掛け声をしてみたのはいいですが、店の前を通る人たちの冷ややかな目線が、たまりません。
まず、CDショップでウォークマンを売っていることを知ってもらわないと、売れない・・
そう思い、来る日も来る日も、とにかく通りすがりの人に声を掛けていたのですが、まったく反応なし状態。
3日間はお客様ゼロ・・
しかし、根気良く続けていると、立止まってくれる人がチラホラでてきました。
最初のお客様は、おたくっぽい学生さんでした。
いきなり、「これとこれはどう違うのですか?」の質問。
しまった・・掛け声ばかりで、商品のことを何も知らなかった・・・
それから、1時間説明書とにらめっこ。
なんとか基本的な説明はできるようになった時に、さっきの学生さんが通りかかりました。
私は、ここぞとばかりに、知ってる限りの説明をしたのです。
そうすると、その学生さんは「じゃあ、買います」と、いとも簡単に購入してくれました。
店長は、「まぐれ売り~」と言っていましたが、私はなんとなくですが、商品の説明をすることが出来て、そしてそのお客様に潜在的な需要さえあれば、売ることが出来るのではないかと、直感でそう思いました。要は需要と供給のマッチング!
それから、私の快進撃は始まります。
まず、話を聞いてもらうことに徹底し、世間話からアプローチし、ウォークマンコーナーへ自然と誘導・・それから、すでに持っているか否かの確認をした後、欲しいか欲しくないかの需要を確認、そして商品説明。などと、自分なりの接客ストーリーを考えたのでした。
それを、着実に実行することで、最初に売れた日から、毎日1台ずつですがコンスタントに売れていきました。
当時は、バブル全盛期でお客様もお金持ってる人が多かったのと、ウォークマンが普及して、だいぶ価格が下がっていたころだったので、1万5000円~2万5000円くらいの価格が売りやすい価格だったのかもしれません。
しかし、順調に売れ出すと欲が出るものです。
「もっと一度にたくさん売りたい!」
そう思った私は、店長に売価を下げる交渉をしました。
なんとか最高1000円までの値引き幅の許可をもらってからは、私は水を得た魚のように接客しました。定価でアプローチして、お客様が迷いだしたら値引き幅の範囲でクロージングをかけるという手法!
なんと、その日の売った台数、10台。
自分でもびっくりする結果でした。
店長は、「もう売らんでいいぞ〜」と言ってました。
だって、1台につき時給100円アップの約束をしているわけですから・・・
その日の時給1500円!店長は男の約束や!と言ってちゃんと払ってくれました。
最終的に、100台のウォークマンを1ヶ月ひとりで売り切りました。
それからというもの、店長が私を見る目が変わりました。
そして、そのお店が閉店するまで、私を雇い続けてくれました。
店長は、「おまえはすごい能力を持っているかも知れん・・」と言ってくれて、
「柳澤は、社会に出たら営業の仕事をしたらいい」と言ってくれたのも、その店長でした。
自分では、何をやってもダメな人間だと思っていたので・・その言葉は本当に嬉しかったし、偶然の結果かもしれないが、一人の社会人に認めてもらえたのは大きな自信に繋がった。
店長は本当に厳しい人で、当時は鬼のように怖かったですが、今では本当に感謝しています。
そして、大学卒業後、私は店長の言葉を信じて、営業マンとして新たなスタートを切ることになるのです。
人生の転機であり、私が営業魂に目覚めた瞬間であったと思うわけです。